~石垣島とサンクスラボの懸け橋~
石垣島で生まれ育った私は、進学や就職を機に約15年間、東京都内で生活を送っていた。そんな中、2022年に家族の「石垣島に帰りたい!」との一言(家族は東京生まれ)で、故郷・石垣島へUターンが決まった。翌年から地元での就職活動を開始し、その中で「IT×福祉」をテーマに掲げるサンクスラボの支援員募集を知り、未経験の分野ではあったが、その理念が私の好奇心を刺激し、入社を決めた。
石垣島には、2024年8月時点でA型事業所が8拠点、B型事業所が18拠点ある。これらの多くは、通所型の事業所として運営されている。一方、竹富町にはB型事業所が西表島に1か所あるのみで、障がいを持つ方々の就労支援環境にはまだ課題が多い。
(川平湾:『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』で三ツ星獲得)
そんな中、私は入社と同時に「離島プロジェクト」に携わることとなった。石垣島や竹富町に住む方々の中には、身体的・精神的な理由で外出が難しく、支援を受ける一歩を踏み出せない方も少なくない。そこで、市役所や竹富町役場、ハローワークをはじめとする関係機関と連携し、地域の就労支援事業所との定期会議に参加。地域とのつながりを深めながら、支援の幅を広げる取り組みを続けている。
●『第9回八重山地区障がい者美術展』出展の背景
こうした地域連携の一環として、石垣市役所で毎月開催される「就労支援事業所全体会議」にも定期的に出席している。その会議の中で、「第9回八重山地区障がい者美術展」の開催が議題として挙がった。
本展の目的は、障がい者に対する理解と関心を高め、社会参加を促進し、福祉の向上に寄与することにある。この趣旨に賛同し、私たちサンクスラボも参加を決定。その際、「八重山地区障がい者文化・スポーツ振興会」の冨名腰会長より、パソコン操作に明るい事業所としてポスター制作を依頼された。
パソコン業務を中心とするサンクスラボでは、全国17拠点に約450名がオンラインで在籍している。利用者の中には余暇の一つとして、イラスト制作やアクセサリー作りを楽しみ、自身のサイトで発表する人も多い。 今回、デザインが得意な方にポスター制作を依頼し、3パターンを作成。その中から、前回の受賞作品を掲載し、出展作品が想像しやすいものを採用した。
(制作したポスター)
ポスター制作のやり取りは石垣市役所福祉課を通じて行い、その際、応募対象外の地域の方が多いものの、団体での出展を希望したところ、石垣島での利用者募集を行う事業所であることから快諾を得た。17拠点ある各オフィスに声をかけた結果、熊本、天神、小倉、下関などのオフィスから、10名のタレントによる12作品が集まった。
●美術展当日
『第9回八重山地区障がい者美術展』は、12月4、5日の2日間、石垣市役所1階コミュニティルームで行われた。八重山地区の就労支援事業所など、団体から15点、個人から60点の計75点の応募があり、工作や陶芸、民具、縫製、絵画、写真など、多彩な作品が並んだ。会場には2日間で約500名の方が訪れた。
サンクスラボでは、集まった作品を動画でまとめ、大型のモニターで動画を映し出して展示を行った。
会場の展示作品の中には、購入できる作品もあり、美術展終了時には約9割の作品が売約済みとなるほどの盛況ぶりだった。私も、石垣在住のパートナーと共に、準備や受付を担当し、来場者や他事業所の方々と、交流を深めることができた。
会場では「この作品、面白いね」「写真みたいな絵だね」「この方のマグカップ素敵だね」などの感想が飛び交い、作品の魅力が来場者の心を捉えていた。最終日の5日午後には表彰式が行われ、受賞者には賞状と副賞が授与された。受賞者の喜びの笑顔と周囲の拍手で、会場は暖かい空気に包まれていた。石垣市の中山義隆市長は「作品には独自の視点や感情が込められており、見る人に気づきや感動を与えてくれた。美術は言葉を超えたコミュニケーション手段であり、作品を通じて障がい者の思いや世界に触れることができた」と挨拶し、美術展は閉幕した。
●感想
今回の美術展を通じ、タレント(利用者)の作品を展示することで、石垣島の障がい者支援の現場にデジタルアートという新たな選択肢を提示することができた。都市部とは異なり、離島ではインターネット環境が整っていない場所も多く、ITに馴染みのない方も少なくない。パソコンを活用した業務や趣味に対する心理的なハードルを下げることは、今後の支援活動の重要な課題となる。
今回の出展は、その第一歩として有意義な機会となった。タレント(利用者)にとっても、作品を展示することで余暇活動が充実し、日々の業務へのモチベーション向上にもつながると考えている。引き続き、地域連携の活動を通じて、石垣島や周辺離島における支援の幅を広げ、支援を受ける一歩を踏み出せる環境づくりに努めていきたい。